discover the world !!

「discover」を手元の辞書で調べたら、「すっかり(co)」「覆っているもの(ver)」を「はずす(dis)」と書いてありました。一般に「発見する」という訳語が充てられます。

『学力をのばす美術鑑賞(VTS)』の中で、フィリップ・ヤノウィンは自分の孫の成長を観察るなかで、その子が「ヘリコプター」という言葉を「発見する」様子を紹介しています。それは、さながら、ヘレンケラーが「water!!」と、サリバン先生に向かって言った時のことのようでした。

大人であれば、そしてアメリカや日本に住んでいるのであれば「ヘリコプター」が何を指す言葉かは理解できます。しかし、子どもは自分がそれを「発見」したかのように感じているのだということを理解することが、VTSを理解する上で大切なことだと述べています。

MoMAを訪れる人の大半は、読解でいうところの「読み方を学ぶ」段階であることがハウゼンの分析から分かりました。ですから、上述の「発見する」という体験がとても重要になるのです。

VTSの基礎研究となっているのが、ハウゼンの「美的感覚の発達(Aesthetic Development)」の研究です。発達段階を5段階に整理していて、3段階目では、美術史家のような知識を得ることで、美的感覚が発達すると考えられています。

By Pieter de Hooch Public domain, via Wikimedia Commons >>>こちら

秋田麻早子の『絵を見る技術』の中に、この、ピーテル・デ・ホーホの作品が紹介されています。秋田によると、名画が名画である所以は、美学上の様々なコンテクスト(文脈)から、造形的な美しさが実現されているからというようなことを述べています。フォーカルポント(画題の焦点)がリーディングライン(目を誘導する工夫)によって、知らずの内に気づかされるのだそうです。

秋田の説明を裏返せば、おそらく、フォーカルポントやリーディングラインという概念を知らなくても、じっと見つめて観察していると「美の秘密」を「発見できる」のが名画ということになります。

ハウゼンの理論は、認知科学の基礎を気付いたジャン・ピアジェの発達段階説を基礎としています。ピアジェの理論では、1つの段階の経験が次の段階の準備となり、次の段階の経験の中で一体のものとして経験を構成する大事な要素になると考えます。ですから、まずは自力で何か美を感じる手掛かりを自分で「発見する」という体験が、後に美術史家の知識を吸収し自分の物にする準備になります。

美術館で「あっ、なんか綺麗!!」とあなたが感じたら、それは「名画」である可能性があるのです。ぜひ、その作品の前で足を止め、10分間の観察をしてみてください。

Picasso Andante

「ゆっくりピカソ」絵画観察法。自力で「知覚力」を磨く絵画観察法の紹介

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