アートは生じる

By James McNeill Whistler, Public domain, via Wikimedia Commons

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アメリア・アレナスの本の中に、19世紀の画家ジェームス・ホイッスラーの「美術は生じるものなのである」という考えが紹介されています。アレナスはそれに同意し、「作品を見る側の視点に立てば」と条件を付けたうえで「あなたと美術作品の間で起こる事柄は、休暇を過ごした浜辺から持ち帰った流木や、プリントされたばかりのスナップ写真を眺めるときに感じることと、さほど違いはない。」と述べています。(『みる かんがえる 話す』アメリア・アレナス 2001 p44)

「あなたと美術作品の間で起こる事柄」とは、「気持ちのよい一日、たとえばあなたは以前にもみたことのある絵をみて、その美しさを味わい、かつて心に浮かんだ連想を思い出すこと」というような心理現象だと説明しています。

その心理現象が絵画を見るときに起きる。その瞬間に、「美術が生じる」ということです。その瞬間において、絵画は身の周りにある物体の1つとしての存在から、「ふたたび絵画となる」とアレナスは説明しています。

「スロー・アート・ディ」の創始者フィル・テリーが言う「目の覚めるような体験(It was a mind-blowing experience)」は、アレナスが言う心理現象と理解することもできるかもしれません。

絵画を見る技法には、さまざまなアドバイスがありますが、「スロー・アート・ディ」のルールの1つで、鑑賞法に関するたった1つのアドバイス「1つの作品を10分間、見る」は、はじめてアートを見る人であれ、長年アート鑑賞を愉しんできた人であれ、もっとも基本的なアドバイスのように思います。

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