絵画観察は、時間長がカギ
「スロー・アート・ディ」という活動がアメリカで2010年から始まりました。
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2008年のある日、フィル・テリー(後に「スロー・アート・ディ」の創始者となった人)がふとした思いつきを持って美術館(The Jewish Museum)の展覧会「Action/Abstraction」を訪れたことから、この活動が生まれました。
テリーの思いつきは、とにかく「1時間かけてゆっくり見てみよう」というものでした。そして実際に行動に移しました。その時彼は、数点の作品(ジャクスン・ポロックの作品など)に絞り、それを1時間かけて鑑賞しました。彼は感動したとそのときの体験を回想しています。その感動を多くの人に知ってほしいということで、「スロー・アート・ディ」がはじまりました。
「スロー・アート・ディ」は、決められた日にち(毎年4月、2024年は4月13日)に5つの作品をそれぞれ10分間かけて鑑賞するというとても簡潔なルールです。このルールを参考にして、ゆっくりピカソでは観察時間を「10分間」としています。
自分で美術館にいって、作品の前に立ち、10分間を目安に観察を始めてみると、最初の3分は苦痛に感じるかもしれません。それを過ぎ5分くらい経過するとだんだんと絵画の中に入ったような感覚がしはじめます。
エイミー・ハーマンは、ハーバード大学のジェニファー・ロバーツ教授の話を引き、「活動のペースを落として、集中してみること」が大切だと説明しています。
私たちが日常的に接している情報は変化のスピードが速いので、感覚がそれに慣れてしまっています。絵画作品は動きません。だから、観察する時間感覚、スピード感を調整することが大切になります。
ちなみに、メトロポリタン美術館の調査では来館者が1作品あたりの鑑賞にかける時間長は「30秒」です。10分間はその20倍の長さです。観察力を磨くには、そのスピードのギャップを調整する必要があるのです。
作品画像 山水図(水色巒光図)/奈良国立博物館所蔵 国宝
出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)
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