ハウゼンの「美的感覚の発達」理論

『学力をのばす美術鑑賞(VTS)』は、美術鑑賞を通して、子どもたちの学習する力を伸ばすための指導書のような本です。その手法の背景にはアビゲイル・ハウゼンの「美的感覚の発達」に関する研究があります。

ハウゼンは、文化的または社会経済的背景に関係なく、鑑賞者は、同じようなパターンで美術の理解を発達させることを実証しました。それを5段階に整理したのが「美的感覚の段階(Aesthetic Stage)」です。それは以下のように特徴づけられています。(詳しくは>>>こちら https://vtshome.org/wp-content/uploads/2016/08/2Housen-Art-Viewing-.pdf)

第1段階・・・説明的段階(Accountive)

第2段階・・・構築的段階(Constructive)

第3段階・・・分類的段階(Classifying)

第4段階・・・翻訳的段階(Interpretive)

第5段階・・・再創造的段階(Re-Creative)

新しい鑑賞プログラムの開発を始めた当初、MoMA(ニューヨークの近代美術館)の来場者について分析したところ、ほとんどの人が初期的な段階にあることが分かりました。その頃、美術館で提供されていたギャラリートークなどは来場者にとても好評でしたが、実は、美的感覚の発達の面からはほとんど貢献しない内容だったということも分かりました。

ハウゼンの研究の基盤には、スイスの心理学者ジャン・ピアジェの認知発達の段階理論があります。基本的には「発達は継起的順序に従う」と考えます。人の認知能力の発達は、段階を踏んで発達し、順番を飛び越えたり、逆進するような順序にはならないという考え方です。継起的順序というのは、第1段階の獲得が、第2段階の準備の役割を果たすということです。ひとつの段階を習得して、はじめてその次の能力が開花するのです。

MoMAの当時のプログラムはこの段階的な発達の理論に沿うものではなかったということです。


L'Art de la peinture(>>>こちら

Johannes Vermeer, Public domain, via Wikimedia Commons

この作品は、高階秀爾『名画を見る眼』に掲載されています。

ハウゼンの発達段階の1~5まで、どの段階の鑑賞もできる作品だと思います。

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