ピアジェの「シェマとシェム」
ジャン・ピアジェの発達段階の理論を理解するうえで重要な役割を果たすのが「シェマ」と「シェム」です。これはフランス語で、日本でよく知られている「スキーム」と同じ言葉です。
心理学でも同じように使われています。
同じ単語を、ピアジェは理論をより厳格に説明するために、「シェマ」と「シェム」を使い分けます。
ピアジェの「シェマ」と「シェム」の関係は、どこか、ソシュールの「シニフィアン」と「シニフィエ」の関係に似ているように感じます。
「ボタンを押す」「背中を押す」「荷物を押す」といった個々の動作を「シニフィアン」のように理解し、その元になる概念を「シニフィエ」ようのに捉え、「動作のシェム」→「押すのシェム」というように理解すると整理しやすいです。
ピアジェの研究によると、ヒトの赤ちゃんは言語を習得する前に、身体的な経験を通して言葉を扱うためのシェムを身につ見つけます。
眼で観察して得た視覚情報から何かを理解する習慣は、言語の習得よりも前に始まります。そのため、小学生が絵画鑑賞を通して国語の学習能力を高められるのです。「学習のシェム」を絵画鑑賞を通して取得して、それを他の教科に応用しようというのがVTSの考え方です。
同様に、絵画鑑賞を使って「観察力を磨く」トレーニングを実施した、イエール大学の医学部の事例も理解できます。さらには、エイミー・ハーマンがそれを警察の捜査や他の分野に応用し、「知覚の技法」というセミナーを開催し、参加者全員の観察力が向上したのもうなずけます。
ボー・ロットは、ピアジェと同じように、生物学の研究からキャリアを開始して、後に神経科学(ピアジェは認知科学)の研究に展開しました。両者の主張が似ている点で、特筆すべきは、「発達」は「学習」の延長線上に考えることができるということです。地球上の生物は環境に適応するために発達すると考えます。当然といえばそれまでですが、ロットは、現代社会における社会状況の変化に適応するのも、同様のプロセスを踏むことで可能だとしています。ですから、ロットの考えをピアジェの考え方を利用して説明すると、「知覚の変化」のシェムを習得できれば、その先で、イノベーションが起きる可能性が高まるのです。(ロットはシェムやシェマを使って説明はしていません)
「ゆっくりピカソ」をお勧めする理由がここにあります。
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